グラインドコアの影響系譜
ハードコアパンクをどこまで速くできるか、その限界を殴りに行った先にグラインドコアが立っている。 Napalm DeathのMick Harrisは、自分たちの音を「Siege+Celtic Frostのリフ」と表現し、grindという語をSwansの破壊的な速度から着想したと語る。 だが最速のブラストビートを先に鳴らしたのはアメリカのRepulsionで、その古典的なブラストがNapalm Deathに先行したと見なされている。 つまりこのシーンは、ストリートパンクとスラッシュとインダストリアルが一点で衝突した交差点だ。 年表ビューに切り替えれば、1980年代前半のこの衝突から、下流の枝がどう分岐したかが縦に伸びて見える。
ふたつの起点 — RepulsionとNapalm Death
起点は一本ではない。RepulsionはDischarge、Black Flag、Slayer、Sodomといったストリートパンクとスラッシュを影響源に挙げ、そのハードコアとスラッシュの交点で古典的なgrindブラストビートを組み上げた。 このブラストがNapalm Deathに先行したと評されるのが、シーンの前提だ。 一方のNapalm Deathは初期録音でCrass路線のアナーコ・パンクを鳴らしており、Mick Harrisは自らの音をSiegeとCeltic Frostのリフの掛け合わせだと表現する。 速さの系譜(Repulsion)と暗さ・混成の系譜(Napalm Death)、この二本が合流したところがグラインドコアの根だ。

結節点 — Napalm Deathから伸びた第一世代
矢印が最も多く集まるのはNapalm Deathだ。ここが分岐点になる。 Napalm Death直後にはCarcassが英grind初期勢として台頭し、TerrorizerはギターのJesse Pintadoが加入する形で同じ系につながる。 アメリカ側ではBrutal Truthがその強度を継承し、ベースのDan Lilkerは自らgrindとデスメタルの結合をこのシーンの定義に据えた。 スウェーデンのNasumに至っては、旧Napalm Death流の正統なgrindを作ることを掲げ、Repulsionに着想した曲まで書いている。

四つの枝 — ゴア/デス/サイバー/PV
結節点から先は、四方向に枝が伸びる。 Carcassの解剖・グロ志向がゴアグラインドを生み、ExhumedはCarcassを主要な影響に公言してその音を2000年代へ運んだ。 grindとデスメタルの技巧の融合はデスグラインドとなり、Cattle Decapitationは初期にCarcass風のデスメタルを志向したと公言している。 ドラムマシンとサンプリングの採用はサイバーグラインドの素地となってAgoraphobic Nosebleedへ、Black Flag由来の騒々しさはInfestやMan Is the Bastardのパワーバイオレンスへと分かれ、現行のFull of Hellがその複数の血を束ねている。 各ノードをクリックすれば、その枝の先のバンドと出典へ飛べる。
出典(本人公言・評論の一部)
- Siege → Napalm Death:出典(Napalm Deathが自らの音を「Siege+Celtic Frostのリフ」と表現)
- Celtic Frost → Napalm Death:出典(Embury曰くND初期音はCeltic Frost等の混成)
- Hellhammer → Celtic Frost:出典(Celtic FrostはHellhammer解散後に同メンバーが結成)
- Swans → Napalm Death:出典(Harrisがgrindの語をSwansの速度・破壊性から着想)
- Discharge → Napalm Death:出典(ND元メンバーが形成期の影響にDischargeを挙げる)
- Crass → Napalm Death:出典(ND初期録音はCrass路線のアナーコ・パンク)
- Discharge → Repulsion:出典(RepulsionはDischarge等ストリートパンクを影響源に挙げる)
- Black Flag → Repulsion:出典(RepulsionはBlack Flag等ハードコアを影響に挙げる)
- Slayer → Repulsion:出典(RepulsionはSlayer等スラッシュを影響源に挙げる)
- Repulsion → Napalm Death:出典(Repulsionが古典的grindブラストビートを発明しNDに先行)
- Napalm Death → Carcass:出典(Carcassは英grind初期勢としてND直後に台頭)
- Napalm Death → Terrorizer:出典(ギターPintadoがNDに加入、両者は同系grind)
- Napalm Death → Brutal Truth:出典(Brutal Truthは米grindの草分けでND系譜を継承)
- Repulsion → Brutal Truth:出典(LilkerはRepulsionを「古典的革命的death-grind」と評)
- Napalm Death → Nasum:出典(Nasumは旧Napalm Death流の正統grind創出を志向)
- Repulsion → Nasum:出典(NasumはRepulsionに着想した曲を書くほど影響大)
- Brutal Truth → Pig Destroyer:出典(Pig Destroyerは米grindのBrutal Truthに影響を受ける)
- Napalm Death → Pig Destroyer:出典(ND影響がPig Destroyerの作風に表れると評される)
- Carcass → Goregrind:出典(Carcassの解剖・グロ志向がgoregrindを生んだ)
- Carcass → Exhumed:出典(Carcassを主要影響と公言しゴアグラインドを演奏)
- Carcass → General Surgery:出典(General SurgeryはCarcass/NDに強く影響を受ける)
- Goregrind → General Surgery:出典(General Surgeryは代表的goregrind実践者)
- Goregrind → Exhumed:出典(初期Carcass流ゴアグラインドを2000年代へ継承)
- Carcass → Deathgrind:出典(米勢がgrindとデスメタルの技巧を融合しdeathgrind化)
- Napalm Death → Deathgrind:出典(Lilkerはデスメタル技巧とgrind強度の結合と定義)
- Deathgrind → Cattle Decapitation:出典(Cattle Decapitationは代表的deathgrindバンド)
- Carcass → Cattle Decapitation:出典(初期はCarcass風のデスメタルを志向したと公言)
- Cybergrind → Agoraphobic Nosebleed:出典(ANBはドラムマシンgrindのcybergrind代表格)
- Powerviolence → Infest:出典(Infestはpowerviolenceの先駆者)
- Napalm Death → Full of Hell:出典(ND影響がFull of Hellの作風に表れると評される)