ギター・ヒーローの系譜
バンドではなく、指の話をする。エレクトリック・ギターという楽器の語彙は、ごく少数の演奏家の手から手へ渡って更新されてきた。 Charlie Christianがジャズにソロ楽器としてのエレキギターを持ち込み、T-Bone Walkerが戦後ブルースの様式を固める。 その語法がChuck Berryのロックンロールと、B.B. Kingの都会派ブルースへ分かれ、1960年代にJimi Hendrix、Eric Clapton、Jeff Beck、Jimmy Pageで一気に爆発する。 ここから先は「誰が誰に憧れたか」の連鎖だ。ノードを選べば、その奏者の上流(憧れた相手)と下流(憧れられた相手)だけが光る。
エレキギターを楽器にした人たち
始まりはジャズとブルースだ。Charlie Christianは、それまで伴奏楽器だったエレキギターにソロの居場所を与えた。 T-Bone Walkerは戦後のエレクトリック・ブルースの語法を確立し、B.B. Kingは後年まで「最大の影響」としてWalkerの名を挙げ続けた。 一方でLes Paulは、多重録音と楽器そのものの開拓者として別の系統を引く。彼が敬愛を公言したのが、ジプシー・ジャズのDjango Reinhardtだ。 この二本の流れ(ブルースの表現と、機械としてのエレキギター)が、次の世代で合流する。
1960年代、爆発点
Chuck Berryがロックンロールのギター語法を定型化し、Hendrixもそのレパートリーを通過した。 B.B. Kingのフレージングは、敬愛を公言したEric Claptonへ受け継がれる。 Jeff Beckは自らのヒーローとしてLes Paulの名を挙げ、Jimmy PageはChuck BerryとLes Paulの双方を土台にした。 そしてJimi Hendrixが、ブルースとロックンロールの全てを飲み込んで表現の天井を外す。 力学ビューで見ると、この時代の数人に上流からの矢印が集中しているのが分かる。ここが系譜の結節点だ。

憧れの連鎖 — シュレッドまで
1970年代末以降は、憧れの相手が明確に言葉として残るようになる。 Eddie Van Halenは最大の影響として繰り返しEric Claptonを挙げ、そこにHendrixとJeff Beckのトーン観が重なった。 Yngwie Malmsteenは、Ritchie Blackmoreを原点と公言し、クラシカルなフレーズ観をシュレッドの文法に翻訳する。 Randy RhoadsはHendrix、Page、Blackmoreを束ねてメタルのクラシカル志向を体現し、その様式はDimebag Darrellへ引き継がれた。 Dimebagは、Tony Iommiのリフ、Van Halenの派手さ、Rhoadsのクラシカルさを同時に崇拝している。 Joe Satrianiに師事したSteve Vaiは、師弟という最も直接的な形で語彙を受け取った稀有な例だ。 各ノードをクリックすれば、その指がどこから来て、どこへ渡ったかが一目で分かる。


音を作った機材
なぜその音になったのか、ならばどの機材なのか。本人の発言と評伝を一次資料に、一台ずつ裏を取って並べた。
Jimi Hendrix
- GuitarFender Stratocaster(右利き用を左手で)
右利き用のストラトを上下逆さに構え、左手で弾いた。ペグの位置も弦の張力配分も本来と反転するため、高音の抜けとアームの効きが通常のストラトとは異なる。あの音色の一因は、この構え方そのものにある。
Amazon楽天出典 - EffectDallas Arbiter Fuzz Face
ゲルマニウム・トランジスタ期のファズ。ギター側のボリュームを絞ると歪みが退いてクリーンに近づく。この可変幅を、右手のボリューム操作だけで曲中に弾き分けた。
Amazon楽天出典 - AmpMarshall Super Lead 100W スタック
歪ませたフルスタックの爆音が音の土台をなす。ファズ、ワウ、Uni-Vibe を通した信号も、この音量で鳴らして初めてあのサウンドとして成立した。
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Eric Clapton
Eddie Van Halen
- GuitarFrankenstrat(自作)
ストラトのボディにギブソン系のハムバッカーを1基だけ搭載した自作機。市販のどの型とも異なる配線が、太いのに速く弾けるトーンを生んだ。
Amazon楽天出典 - AmpMarshall Super Lead 100W + Variac
Variac で電源電圧を落とし、アンプを規定外の領域まで追い込んで飽和させた。いわゆる「ブラウン・サウンド」であり、メーカーの想定にない使い方から生まれている。
Amazon楽天出典 - EffectMXR Phase 90 / Flanger
リフに揺らぎとうねりを加える定番の踏み物。「Eruption」のあの質感には、このモジュレーションが効いている。
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Tony Iommi
- Gear自作のプラスチック製指サック(thimble)
工場の事故で、フレットを押さえる右手の中指と薬指の先端を失った。溶かしたプラスチックで作った覆いをかぶせて弾き、変わった指先の感覚が、あの運指の出発点になっている。
出典 - Guitar極細ゲージ弦 + ダウンチューニング
指先の負担を減らすため弦を極端に細くし、張力を緩めるためチューニングを半音から3半音下げた。弾きやすさのための処置だったが、下がった音程は今ではヘヴィ・メタルの「重さ」の原型と見なされる。
Amazon楽天出典 - GuitarGibson SG(+ Laney アンプ)
軽く弾きやすいSGを主軸に、英国製の Laney で低域を押し出した。ブラック・サバスのあの分厚い音の壁は、この組み合わせで成り立っている。
Amazon楽天出典
Django Reinhardt
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出典(本人公言・評論の一部)
- Django Reinhardt → Les Paul:出典(Les Paulが敬愛を公言したジャズ・ギターの巨匠)
- T-Bone Walker → B.B. King:出典(B.B. Kingが最大の影響として繰り返し名を挙げた)
- B.B. King → Eric Clapton:出典(Claptonが敬愛を公言。共演作も残す)
- Les Paul → Jeff Beck:出典(Beckがヒーローと公言したエレキギターの父)
- Jimi Hendrix → Eddie Van Halen:出典(ロック・ギター表現の解放がEVHの前提に)
- Eric Clapton → Eddie Van Halen:出典(Van Halenが最大の影響として繰り返しClaptonを挙げた)
- Ritchie Blackmore → Yngwie Malmsteen:出典(Malmsteenが最大の影響と公言。Rainbowが原点)
- Ritchie Blackmore → Randy Rhoads:出典(クラシカルなフレーズ観の源として)
- Tony Iommi → Dimebag Darrell:出典(ヘヴィなリフの祖として崇拝)
- Eddie Van Halen → Dimebag Darrell:出典(Dimebagが最大級の影響として公言)
- Randy Rhoads → Dimebag Darrell:出典(Dimebagが敬愛。Rhoads流のクラシカル志向を継承)
- Joe Satriani → Steve Vai:出典(VaiはSatrianiに師事。師弟として広く知られる)