系譜ヒップホップ/電子

ヒップホップの影響系譜

系譜
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ヒップホップは、既存の音を素材として鳴らし直すところから始まった。1973年、DJ Kool Hercはジェームス・ブラウンに代表されるファンクのブレイク部分を引き伸ばし、そこにアフリカ・バンバータやグランドマスター・フラッシュが続いた。 素材はさらに古い。ジョージ・クリントンのPファンク、ラスト・ポエッツとギル・スコット・ヘロンの政治詩が、のちのビートと言葉の型を用意していた。 この系譜の技術面で最も多くの矢印を集めるのがRakimだ。エド・ラヴァーは「ラキムがいなければNasもジェイ-Zもビギーもいなかった」と言い切っている。 下のグラフは、その源流から黄金期、East/West Coast、そしてKanye・Kendrick・トラップまでを、本人発言と評論の言葉で配線したものだ。

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★ 大物 ルーツ 中核 子孫実線=本人公言 / 細線=評論 / 破線=派生
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ブレイクと政治詩 — 二つの素材

起点はターンテーブルにある。DJ Kool Hercはファンクのブレイク部分を引き伸ばすブレイクビーツ技法を生み、その革新はアフリカ・バンバータやグランドマスター・フラッシュへ直接受け継がれた。 バンバータの場合、素材はファンクだけではない。彼はクラフトワークへの愛から「Planet Rock」を作り、そのTrans-Europe Expressの旋律を借用したことを公言している。 もう一本の系統は言葉から来る。ギル・スコット・ヘロンはラスト・ポエッツの公演を見て進むべき方向を見出したと語っており、この政治色の濃いラップの精神は、のちにパブリック・エネミーへ流れ込むことになる。 当時は誰も「ジャンル」とは呼ばなかったが、ここでビートと言葉の二本の素材が出揃った。

It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back — Public Enemy
It Takes a Nation of Millions to Hold Us BackPublic Enemy1988
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Rakimという分岐点

黄金期に入ると、韻の運び方そのものが系譜の幹になる。矢印が最も集まるのがRakimだ。 その独自のラップ・スタイルは、Nas、Jay-Z、The Notorious B.I.G.、Eminemへ連なると評される。エミネムは自身に影響を与えたMCの一人としてRakimの名を挙げている。 言葉の設計図はほかにもある。ジェイ-Zは、ビートをまず聴いて音像に合わせて言葉を組み立てるビギーの手法を学んだと語っており、そのビギー自身はビッグ・ダディ・ケインの低いバリトンやクール・G・ラップを先駆けとして背負っていた。 1993年、Wu-Tang Clanの『Enter the Wu-Tang(36 Chambers)』のハードコアな青写真が、Nas、ビギー、ジェイ-Zら東海岸勢の道を開いたと見なされている。 技術の系譜は、こうして一人のMCから複数の東海岸へ分岐していく。

Enter the Wu-Tang (36 Chambers) — Wu-Tang Clan
Enter the Wu-Tang (36 Chambers)Wu-Tang Clan1993
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Illmatic — Nas
IllmaticNas1994
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Pファンクとギャングスタ — 西海岸の土台

西海岸の重心は、音と主題の両方でたどれる。音を支えたのはジョージ・クリントンのPファンクだ。Dr. Dreは「The Chronicを本当に聴けばそれは終始パーラメント・ファンカデリックだ」と語り、スヌープの「Who Am I」は同じくクリントンの「Atomic Dog」をサンプリングしている。ドレーとスヌープは、そのPファンクをG-funkの土台へと作り変えた。 主題の系譜は証言で繋がる。アイス-Tはスクーリー・Dの「P.S.K.」に影響を受けてギャングスタ・ラップの主題に転じ、そのドレーはアイス-Tとスクーリー・Dの曲だけを回していた時期があったと語っている。 スクーリー・Dの作品はイージー-EとN.W.Aの「Boyz-n-the-Hood」にも大きく影響した。ここが西海岸ギャングスタの結節点だ。 のちにケンドリック・ラマーは、この西海岸の土台の上に立つ。彼は2パックを大きな霊感源に挙げ、その生々しさと引かない姿勢を吸収したと述べている。

The Chronic — Dr. Dre
The ChronicDr. Dre1992
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南部とトラップ — 移った本流

2000年代以降、系譜の本流はアトランタやメンフィスへ移る。 いわゆる「ミーゴス・フロウ」の三連符は、スリー・シックス・マフィアのロード・インファマスが起源とされ、グッチ・メインやT.I.もスリー・シックス・マフィアを影響源に挙げている。 リル・ウェインは、ドレイク、ヤング・サグ、ケンドリック・ラマーを芸術的な後継者として持つ。とりわけヤング・サグほどウェインの音楽と直接的な関係を持つラップ・キャリアはないとされる。 本流が南へ移り、そこからまた全国へ広がっていく。力学ビューで矢印の集まるノードを追い、年表ビューに切り替えれば、この移動が縦の時間軸に伸びて見える。

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出典(本人公言・評論の一部)