カントリー/フォークの影響系譜
アメリカのカントリーとフォークは、二本の別の川ではない。同じ源流から流れ出て、Hank Williamsという一つの結び目で何度も交差する一枚の水系だ。 1927年に録音を始めたJimmie RodgersとThe Carter Familyがその上流に立ち、ここからHank Williams、Johnny Cash、Bill Monroeへ枝が伸びる。 同じ源流から、Woody Guthrieがフォークの流れを引き受け、Pete Seegerを経てBob Dylanへ落ちていく。 この幹はやがてロックへ二本の橋を架け、下流でアウトロー・カントリーとオルタナ・カントリーに分岐する。 年表ビューに切り替えれば、1927年から1994年までの流れがそのまま縦に伸びて見える。
源流 - RodgersとGuthrie
グラフで最も多く矢印を出すのがJimmie RodgersとWoody Guthrieだ。 Bill Monroeは1938年、Rodgersの「ミュール・スキナー・ブルース」でグランド・オール・オープリーのオーディションに合格し、彼を影響源に挙げている。 Merle Haggardは1969年にRodgersへの献辞盤を出してその遺産を称え、Johnny Cashは幼少期にラジオでRodgersとThe Carter Familyに触れて育った。 一方のGuthrieはそのCarter Familyのゴスペル録音に強く影響され、その旋律を自作に転用したと語っている。 カントリーの祖とフォークの祖は、この最初期にすでに音を共有していた。
Hank Williamsという結び目
この系譜の中心にHank Williamsがいる。Williamsは自身がRodgersのファンで、その田園的な作風を取り込んだと伝わり、下流には矢印を大量に放つ。 Johnny Cashは複数のアーティストと並べてWilliamsの影響を認め、Waylon Jenningsは「アウトロー・ヒーロー、基準を定める存在がいたとすればHank Williamsだった」と語っている。 Merle Haggardは家のレコードでBob Willsと並んでWilliamsを聴いて独学した。 そしてBob Dylanは「ガスリーの曲が宇宙を支配する前は、Hank Williamsが一番好きなソングライターだった」と公言している。 カントリーの本道もフォーク・リバイバルも、この一点で交差する。


ロックへの二本の橋
この幹はロックへ二本の橋を架ける。一本目はBob Dylanだ。The Byrdsが1965年にDylanの「ミスター・タンブリン・マン」をエレクトリックに仕立て、フォーク・ロックという下位ジャンルが生まれた。 二本目がGram Parsons。彼はThe Byrdsのカントリー作『ロデオの恋人』を強く方向づけ、Keith Richardsと親交を深めてThe Rolling Stonesをカントリーへ目覚めさせ、The Flying Burrito BrothersでEaglesへの道を開いたと評される。 Eaglesのグレン・フライは、トルバドールでBurrito Brothersを研究しハーモニーを学んだと回想している。 カントリーとフォークの源流が、ここでロックの本流と合流する。

下流 - アウトローとオルタナ
下流で幹は二つの現代的な枝に分かれる。一つはアウトロー・カントリーで、Waylon JenningsとWillie NelsonはBob WillsやHank Williamsら先人を源流とする。 もう一つがオルタナ・カントリーだ。Uncle Tupeloは「Woody Guthrieから始まりFlying Burrito Brothersに至る」影響を公言し、解散後にその灰からWilcoとSon Voltが生まれた。 Townes Van Zandtの系列では、Steve Earleが彼を師と仰ぎ「世界一のソングライターだ」と言い切っている。 各ノードをクリックすれば、その枝の先のページへ飛べる。
出典(本人公言・評論の一部)
- Jimmie Rodgers → Hank Williams:出典(ハンク・ウィリアムズはジミー・ロジャースのファンで、その田園的な作風を自身の音楽に取り込んだ。)
- Roy Acuff → Hank Williams:出典(無伴奏でバンドの音より上で歌うグランド・オール・オープリーのロイ・エイカフに似た朗々とした唱法を身につけた。)
- Jimmie Rodgers → Bill Monroe:出典(モンローはジミー・ロジャースの「ミュール・スキナー・ブルース」でオープリーのオーディションに合格し、ロジャースを影響源に挙げた。)
- Jimmie Rodgers → Johnny Cash:出典(幼少のキャッシュはラジオでカーター・ファミリーやジミー・ロジャースらカントリーの先駆者に触れて育った。)
- The Carter Family → Johnny Cash:出典(キャッシュはカーター・ファミリーに影響を受け、後にジューン・カーターと結婚しメイベルらと共演した。)
- Hank Williams → Johnny Cash:出典(キャッシュはハンク・ウィリアムズら複数のアーティストから影響を受けた。)
- The Carter Family → Woody Guthrie:出典(ガスリーはカーター・ファミリーのゴスペルやカントリー録音に強く影響され、その旋律を自作に転用した。)
- Jimmie Rodgers → Woody Guthrie:出典(ガスリーの音楽はテキサスのヨーデル歌手ジミー・ロジャースに根ざしていた。)
- Lead Belly → Woody Guthrie:出典(レッドベリーは1940年代のウディ・ガスリーら多くのフォーク演奏家に深い影響を与えた。)
- Lead Belly → Pete Seeger:出典(レッドベリーはピート・シーガーら同世代のフォーク演奏家に大きな影響を与えた。)
- Woody Guthrie → Bob Dylan:出典(ディランはダストボウルの吟遊詩人ウディ・ガスリーの曲と人物像に心酔した。)
- Hank Williams → Bob Dylan:出典(ディランは「ガスリーの曲が宇宙を支配する前は、ハンク・ウィリアムズが一番好きなソングライターだった」と語った。)
- Pete Seeger → Joan Baez:出典(バエズは13歳でピート・シーガーの演奏に強く心を動かされ、彼のレパートリーを練習して人前で歌い始めた。)
- Odetta → Joan Baez:出典(バエズはオデッタを主要な影響源の一人として挙げている。)
- Kitty Wells → Loretta Lynn:出典(ロレッタ・リンは女性開拓者キティ・ウェルズとパッツィ・クラインを崇拝した。)
- Patsy Cline → Loretta Lynn:出典(リンはパッツィ・クラインを初期のメンターであり親友と認め、1977年に追悼盤を録音した。)
- Lefty Frizzell → Merle Haggard:出典(ハガードは「3、4年間レフティ・フリッゼルの曲しか歌わなかった」と語り、その唱法を模倣した。)
- Jimmie Rodgers → Merle Haggard:出典(ハガードは1969年にジミー・ロジャースへの献辞盤を発表するなどその遺産を称えた。)
- Bob Wills → Merle Haggard:出典(ハガードは家にあったレコードでボブ・ウィルズやハンク・ウィリアムズに影響され独学した。)
- Hank Williams → Waylon Jennings:出典(ジェニングスは「アウトロー・ヒーロー、基準を定める存在がいたとすればハンク・ウィリアムズだった」と語った。)
- Bob Wills → Waylon Jennings:出典(初期のアウトローはボブ・ウィルズやハンク・ウィリアムズら先人に特に影響を受けた。)
- Bob Dylan → The Byrds:出典(バーズはディランの「ミスター・タンブリン・マン」をエレクトリックに仕立て、フォーク・ロックという下位ジャンルを生んだ。)
- Gram Parsons → The Byrds:出典(パーソンズはバーズ初のカントリー作『ロデオの恋人』の制作を強く方向づけた。)
- Gram Parsons → The Rolling Stones:出典(パーソンズはキース・リチャーズと親交を深め、ローリング・ストーンズをカントリー音楽へ目覚めさせた。)
- Gram Parsons → The Flying Burrito Brothers:出典(グラム・パーソンズはフライング・ブリトー・ブラザーズでカントリー・ロックを切り開いた。)
- The Flying Burrito Brothers → Eagles:出典(イーグルスのグレン・フライはトルバドールでブリトー・ブラザーズを研究しハーモニーを学んだと回想した。)
- Woody Guthrie → Uncle Tupelo:出典(アンクル・テューペロはウディ・ガスリーから始まりフライング・ブリトー・ブラザーズに至る影響を公言した。)
- Gram Parsons → Uncle Tupelo:出典(アンクル・テューペロはハンク・ウィリアムズやグラム・パーソンズらカントリー勢から影響を取り込んだ。)
- Uncle Tupelo → Wilco:出典(解散後、トゥイーディはアンクル・テューペロの灰の中からウィルコを結成した。)
- Uncle Tupelo → Son Volt:出典(解散後、ファーラーはハイドーンとサン・ヴォルトを結成した。)
- Townes Van Zandt → Steve Earle:出典(スティーヴ・アールはタウンズ・ヴァン・ザントを師と仰ぎ「世界一のソングライターだ」と公言した。)