エモ/ポストハードコアの影響系譜
エモの起点はワシントンD.C.のハードコアだ。Minor ThreatのIan MacKayeがRites of Springのファンになり、 ハードコアの火を保ったまま内省的に歌うEmbraceを、続いてFugaziを結成する。 1985年前後に「エモーショナル・ハードコア」と呼ばれたこの音が、Sunny Day Real Estateの1994年作『Diary』を経て、 American Footballの内向きなギターや、Jimmy Eat World・My Chemical Romance・Paramoreのメインストリームまで枝を伸ばした。 起点のRites of Spring・Fugaziは、このサイトの「パンク/ハードコア」シーンと地続きにある。 下のグラフは、その源流から2000sエモポップ、近年のエモ・リバイバルまでを出典付きで辿る。
D.C.の一本道 — Rites of SpringからFugaziへ
エモの源流は、人の移動でつながっている。Minor ThreatのIan MacKayeはRites of SpringのファンになってエモバンドEmbraceを結成し、 そのEmbraceを1987年に畳んだMacKayeが今度はFugaziを共同で立ち上げた。 Fugaziにはもう一方の起点であるRites of Springのメンバー、Guy PicciottoとBrendan Cantyも合流している。 つまりFugaziは、D.C.エモコアの二本の流れが一つに束ねられた場所だ。 背景にはさらに一世代前のHüsker Düがあり、1984年の『Zen Arcade』はRites of SpringとEmbraceの主要な影響源としてしばしば挙げられる。
結節点のFugaziとSunny Day Real Estate
グラフを力学ビューで見ると、最も多くの矢印が出ていくのがFugaziだ。 At the Drive-InはFugaziを影響源に挙げ、Glassjawも「フガジを含む数多くのバンド」を名指しする。 ThursdayやCap'n Jazzもフガジ系ポストハードコアの系譜に置かれる。 もう一本の太い流れがSunny Day Real Estate。1992年結成のこのバンドは、初期の影響源にRites of SpringとFugaziを挙げており、 1994年の『Diary』はBraid・The Get Up Kids・The Promise Ringが「秘密を共有し合うように響く」と評されたミッドウエスト・エモの基準点になった。 At the Drive-InのJim Wardは、そのSunny Dayを「フガジを超えたフガジ」と呼んで影響源に挙げている。
メインストリーム化、そして源流への回帰
2000年代、エモはチャートの音楽になる。Fall Out BoyのPete Wentzはライフタイムを、 Jawbreaker・The Get Up Kids・Braidといった初期エモをインスピレーション源に挙げた。 ParamoreのHayley Williamsは影響源としてSunny Day Real Estate、Jawbreaker、Jimmy Eat Worldを名指しし、 My Chemical RomanceのGerard Wayは「バンドはThursdayに強く影響されている」と語っている。 一方でCap'n JazzのドラマーMike KinsellaはAmerican Footballを結成し、その内向きなギターが後年の起点になった。 そして2010年前後、The HotelierやModern BaseballがAmerican FootballやCap'n Jazzら90年代ミッドウエスト・エモを掘り起こす「エモ・リバイバル」を起こす。 一度メインストリーム化した川が源流へ遡って再生した格好だ。各ノードをクリックすれば、その枝の先のページへ飛べる。



出典(本人公言・評論の一部)
- HuskerDu → RitesOfSpring:出典(ヒュースカー・ドゥのZen Arcadeはライツ・オブ・スプリングがハードコアの新方向を切り開く土台になったと評されている。)
- HuskerDu → Embrace:出典(ヒュースカー・ドゥの1984年作Zen Arcadeはエンブレイスとライツ・オブ・スプリングの主要な影響源としてしばしば挙げられる。)
- MinorThreat → RitesOfSpring:出典(マイナー・スレットのイアン・マッケイはライツ・オブ・スプリングのファンになりエモバンドのエンブレイスを結成した。)
- MinorThreat → Embrace:出典(エンブレイスはマイナー・スレットのイアン・マッケイが結成し、ハードコアの火と情熱を保ちつつ内省的に歌った。)
- RitesOfSpring → Fugazi:出典(フガジはライツ・オブ・スプリング出身のギ・ピチオットとブレンダン・キャンティを擁して結成された。)
- Embrace → Fugazi:出典(フガジはエンブレイスのフロントマンだったイアン・マッケイが1987年に共同結成した。)
- RitesOfSpring → SunnyDayRealEstate:出典(サニー・デイ・リアル・エステイトの初期の影響源にはディスコードのライツ・オブ・スプリングやフガジが含まれる。)
- Fugazi → SunnyDayRealEstate:出典(デビュー作Diaryはフガジやジョウブレイカーといったエモ勢からエネルギーと歌詞の面で影響を受けている。)
- Fugazi → AtTheDriveIn:出典(アット・ザ・ドライヴ・インの影響源にはフガジが挙げられ、彼らの音楽はフガジ系のポストハードコアに強く影響された。)
- SunnyDayRealEstate → AtTheDriveIn:出典(ジム・ウォードはサニー・デイ・リアル・エステイトを「フガジを超えたフガジ」と呼び影響源に挙げている。)
- Fugazi → Glassjaw:出典(グラスジョーはフガジを含む数多くのバンドを影響源として挙げている。)
- Fugazi → Thursday:出典(サーズデイはアット・ザ・ドライヴ・インやリフューズドらと並びフガジを自らの音楽への影響源として認めた。)
- Fugazi → CapnJazz:出典(キャプテン・ジャズやブレイドはフガジを影響源として挙げる著名なポストハードコア勢に含まれる。)
- SunnyDayRealEstate → JimmyEatWorld:出典(ジミー・イート・ワールドはサニー・デイ・リアル・エステイトに刺激されて遅いテンポと多彩な曲構成を試みた。)
- CapnJazz → AmericanFootball:出典(キャプテン・ジャズのドラマーだったマイク・キンセラがアメリカン・フットボールを結成した。)
- SunnyDayRealEstate → Paramore:出典(ヘイリー・ウィリアムスは影響源としてサニー・デイ・リアル・エステイト、ジョウブレイカー、ジミー・イート・ワールドを挙げた。)
- JimmyEatWorld → Paramore:出典(パラモアのメンバーはジミー・イート・ワールドやサニー・デイ・リアル・エステイトといったポストハードコア/エモ勢を愛聴していた。)
- SunnyDayRealEstate → DashboardConfessional:出典(クリス・キャラバはテキサス・イズ・ザ・リーズンやサニー・デイ・リアル・エステイトといった先行世代に敬意を抱いていた。)
- Lifetime → BrandNew:出典(ジェシー・レイシーはライフタイムを決定的な影響源として挙げ、その簡潔で内省的な曲構成がブランニュー初期に反映された。)
- Lifetime → FallOutBoy:出典(ピート・ウェンツはミスフィッツやラモーンズと並びライフタイムをインスピレーション源として挙げている。)
- Jawbreaker → FallOutBoy:出典(フォール・アウト・ボーイはジョウブレイカーやゲット・アップ・キッズら初期エモから影響を受けた。)
- TheGetUpKids → FallOutBoy:出典(フォール・アウト・ボーイはジョウブレイカー、ゲット・アップ・キッズ、ブレイドといった初期エモから影響を受けた。)
- Thursday → MyChemicalRomance:出典(ジェラルド・ウェイはバンドがサーズデイに強く影響されていると述べている。)