エレクトロニック・ミュージックの影響系譜
電子ダンス音楽の系譜をどこからたどっても、矢印の多くは1970年代のドイツ、Kraftwerkへ収束する。 デトロイトのJuan Atkinsは1980年頃、「クラフトワークやジョルジオ・モロダーばかりを録音したテープを車でかけていた」と語り、そこからテクノを組み立てた。 同じ頃シカゴでは、Frankie Knucklesがディスコを編集台の上で作り替え、ハウスの土台を築いていた。 源流はKraftwerk、Giorgio Moroder、Brian Enoの三本。ここからデトロイト・テクノとシカゴ・ハウスの二大震源が立ち上がり、IDM、ドラムンベース、ダブステップ、EDMへと枝が伸びる。 年表ビューに切り替えれば、この流れがそのまま縦に伸びて見える。
源流 - ドイツから届いた「未来の音」
1977年、Giorgio Moroderがドナ・サマーの"I Feel Love"を完全な合成音で組み上げたとき、それを聴いたBrian Enoは「未来の音を聴いた」と叫んだと伝えられる。 機械が生む反復とグルーヴは、この一曲でディスコの外へ漏れ出した。 だが、より広く下流に矢印を伸ばしたのはKraftwerkだ。彼らの"Numbers"や"Trans-Europe Express"はAfrika Bambaataaの"Planet Rock"を生み、エレクトロの誕生へ直結したとされる。 Kraftwerk、Moroder、Enoの三本の源流は、まだ「テクノ」も「ハウス」も名乗っていない。名前を与えたのは、それを受け取った次の世代だ。

二つの震源 - デトロイトとシカゴ
1980年代、二つの都市がほぼ同時にダンス音楽の未来を作った。 デトロイトのBelleville Three、Juan Atkins・Derrick May・Kevin Saundersonは、Kraftwerkと日本のイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を影響源に挙げている。Saundersonは「クラフトワークの未来的なサウンドが電子音楽への考え方を大きく形づくった」と語り、Mayはクラフトワークの音を「上品で清潔で、宇宙のように美しかった」と評した。 一方シカゴでは、Frankie Knucklesがディスコやユーロディスコを編集してハウスの土台を築き、その初期録音、とりわけLarry Heardの作品がディープ・ハウスの起源に帰せられる。 この二大震源に敬意を捧げたのがDaft Punkだ。彼らは"Teachers"という曲で、Knucklesらシカゴ・ハウスとAtkinsらデトロイト・テクノの名を列挙し、さらにPファンクのGeorge Clintonの名も並べている。

分岐 - IDMからEDMまで
90年代以降、電子音楽は無数に枝分かれする。Aphex Twinの系譜には主要な影響としてKraftwerkが挙げられ、その作品はBrian Enoのアンビエント的手法を「より私的で破壊的な感情へ拡張したもの」と評される。同じEnoとTangerine Dreamに着想を得たThe Orbは、シカゴ・ハウスのリズムを減速させてアンビエント・ハウスへ流し込んだ。 ベース・ミュージックの側では、GoldieがRufige Kru名義で残した作品がBurialに影響を与えたとされ、ダブステップの初期建築家Skreamへも枝が伸びる。 そしてDaft Punkの影は最も遠くまで届く。ピラミッド・ステージの演出に倣って顔を隠す着想を得たDeadmau5、「ハウスという言葉を知る前からダフト・パンクを聴いていた」と語るAvicii。EDMの巨大な舞台は、この源流の延長線上にある。 グラフを力学ビューで見ると、上流から下流へ最も多くの矢印が集まるのがKraftwerkだ。各ノードをクリックすれば、その枝の先のページへ飛べる。

出典(本人公言・評論の一部)
- Kraftwerk → Juan Atkins:出典(ホアン・アトキンスは1980年頃クラフトワークやジョルジオ・モロダーばかりを録音したテープを車でかけていたと語っている。)
- Kraftwerk → Derrick May:出典(デリック・メイはクラフトワークの音楽を「上品で清潔で、宇宙のように美しかった」と評し影響を認めている。)
- Giorgio Moroder → Juan Atkins:出典(アトキンスはクラフトワークと並べてジョルジオ・モロダーを初期の愛聴対象として挙げている。)
- Yellow Magic Orchestra → Juan Atkins:出典(YMOはクラフトワークと並びデトロイト・テクノの開拓者アトキンスらに重要な影響を与えたとされる。)
- Yellow Magic Orchestra → Derrick May:出典(YMOはアトキンス、ソーンダーソン、メイらが自作への重要な影響として名を挙げている。)
- Yellow Magic Orchestra → Kevin Saunderson:出典(YMOはケヴィン・ソーンダーソンを含むデトロイト・テクノの開拓者たちに影響を与えたとされる。)
- Kraftwerk → Yellow Magic Orchestra:出典(YMOはクラフトワークに強く影響を受けつつ、模倣ではなく日本独自のテクノポップを作ろうとした。)
- Kraftwerk → Afrika Bambaataa:出典(クラフトワークの「Numbers」「Trans-Europe Express」がバンバータの「Planet Rock」を生みエレクトロの誕生に繋がった。)
- Kraftwerk → Kevin Saunderson:出典(ソーンダーソンはクラフトワークの未来的なサウンドが電子音楽への考え方を大きく形づくったと語る。)
- Giorgio Moroder → Brian Eno:出典(モロダーの「I Feel Love」を聴いたブライアン・イーノは「未来の音を聴いた」と叫んだと伝えられる。)
- Frankie Knuckles → Daft Punk:出典(ダフト・パンクは「Teachers」でシカゴ・ハウスとデトロイト・テクノのアーティストたちへの敬意を列挙している。)
- Juan Atkins → Daft Punk:出典(ダフト・パンクはシカゴ・ハウスとデトロイト・テクノに多大な影響を受けたと語っている。)
- George Clinton → Daft Punk:出典(ダフト・パンクは「Teachers」でジョージ・クリントンを挙げ、Pファンクのマザーシップが強い印象を残したと述べている。)
- Kraftwerk → Aphex Twin:出典(エイフェックス・ツインの音楽的系譜にはクラフトワークが主要な影響として挙げられる。)
- Brian Eno → Aphex Twin:出典(エイフェックス・ツインの作品はブライアン・イーノのアンビエント的手法をより私的で破壊的な感情へ拡張したものと評される。)
- Kraftwerk → Underworld:出典(アンダーワールドのカール・ハイドらは電子音楽への愛がクラフトワークの「Computer World」から始まったと語る。)
- Brian Eno → The Orb:出典(ジ・オーブのパターソンはシカゴ・ハウスを減速させ、イーノら70年代アンビエント先駆者に着想を得たシンセと効果を加えた。)
- Tangerine Dream → The Orb:出典(パターソンはブライアン・イーノとタンジェリン・ドリームに着想を得た効果音をハウスに重ねた。)
- Goldie → Burial:出典(ゴールディがRufige Kru名義で残した作品はベリアルに影響を与えたとされる。)
- Daft Punk → Avicii:出典(アヴィーチーはハウスという言葉を知る前からダフト・パンクを聴いていたと述べている。)